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令和7年7月1日施行:定期報告制度(12条点検)の法改正ポイントを解説

2025/08/21

コラム

定期報告制度(12条点検)はたびたび改正されています。

今回は、令和7年7月1日に施行された法改正のポイントを解説します。

■定期報告制度(12条点検)改正の目的


定期報告制度(12条点検)は、建築物やその設備を定期的に調査・検査し、報告することを義務付けた建築基準法上の制度です。

令和7年7月1日に施行された改正内容は、調査・検査項目の重複の解消や調査・検査の合理化などを目的としており、改正にともなって調査・検査項目が変更されています。

■改正のポイント

今回の改正のポイントは以下の4つです。各ポイントの概要を解説します。

  • 調査・検査項目の見直し
  • 調査・検査の合理化
  • 構造基準と調査・検査基準との不整合を解消
  • その他の変更

◇調査・検査項目の見直し

調査・検査項目の見直しでは、12条点検に含まれる4つの調査・検査「特定建築物定期調査」「建築設備定期検査」「防火設備定期検査」「昇降機等定期検査」の検査項目に重複がある問題を解消しています。具体的な内容は以下のとおりです。

特定建築物定期調査と建築設備等定期調査の重複解消

設備作動状況の確認に関する項目が重複していたため、「換気設備」「排煙設備」「可動式防煙壁」「非常用の照明装置」の作動の状況確認は、建築設備定期検査でまとめて実施します。

また、「換気設備」「非常用の照明装置」の物品の放置の状況確認は、建築設備定期検査で実施します。

 

特定建築物定期調査と昇降機等定期検査の重複解消

特定建築物定期調査と昇降機等定期検査において、「非常用エレベーター」の作動の状況確認に関する調査が重複していたため、昇降機等定期検査でまとめて実施します。これにともない、特定建築物定期調査では非常用エレベーターの作動の状況確認が不要になります。

 

特定建築物定期調査と防火設備定期検査の重複解消

「常時閉鎖式防火扉(常閉防火扉)」について、運動エネルギー等、本体と枠の劣化および損傷の状況、作動の状況、物品の放置の状況、固定の状況の確認は、防火設備定期検査で実施します。

また、常閉防火扉を防火設備定期検査の対象に追加し、検査対象を各階の主要な常閉防火扉に限定します。

ただし、特定行政庁が規則で特定建築物定期調査に「各階の主要な常閉防火扉」に関する項目を付加した場合、防火設備定期検査による検査を省略可能です。検査前に、各特定行政庁の対応状況を確認しましょう。

 

◇調査・検査の合理化

今回の改正では、調査・検査の合理化も実施されています。これにより、調査・検査にかかる時間の短縮が期待できます。

新技術を活用した調査・検査が可能に

定期調査・検査(建築物、昇降機、遊戯施設、建築設備、防火設備)において、「目視により確認する」とされている調査・検査方法について、新技術を活用できるようになります。

新技術としては、赤外線装置・可視カメラ・センサーなどが挙げられます。

「非常用の照明装置」における自動検査機能の活用

予備電源によって点灯する「非常用の照明装置」について、自動検査機能を有する場合には、非常点灯終了後の機器の表示等により確認できるようになります。

また、照度の検査では、自動検査機能を有し、かつ、非常用の照明装置としてLEDを用いている場合には、非常点灯終了後の機器の表示等により確認できるようになります。

◇構造基準と調査・検査基準との不整合を解消

防火設備定期検査における防火扉等の危害防止装置の検査項目について、構造基準と調査・検査基準でズレが生じていたことから、「人の通行の用に供する部分に限る」ことを明確化します。

また、構造基準では基準適合を求めていない一方で、調査・検査基準において基準適合を求めているもの等については、調査・検査基準から削除します。

◇その他の変更

上記に加え、以下の3点が変更になっています。

  • 大規模木造建築物等の主要構造部の規定において、スプリンクラー設備の設置を行なうことにより構造の緩和を受けている場合は、特定建築物定期調査が必要になる
  • 報告書様式が新しくなる
  • 報告書提出のオンライン化が全国で拡がる

■都道府県ごとの法改正への対応状況

12条点検では、令和7年1月29日の告示改正により特定行政庁が特定建築物調査に調査項目を付加することができます。これにより結果的には特定建築物調査を従来どおりに行うことが可能となります。

全国的に特定建築物調査を従来どおりに行う傾向にありますが、一部の県(青森県・神奈川県(横浜市・川崎市を除く)・広島県・大分県・沖縄県など)では告示改正どおりに特定建築物定期検査や防火設備検査のなかで実施する方針です。また、報告書をオンラインにより受け付けている地域は増加傾向にあります。

詳しい調査・検査内容の変更については、各特定行政庁に確認してください。

ここでは、代表的な都道府県における「常閉防火扉」・「建築設備」の移行状況を明記します。(2025年7月23日時点、弊社調べ)

◇北海道

常閉防火扉:従来どおり特定建築物定期調査にて検査
建築設備 :告示改正どおり

参考:
定期報告|北海道

◇宮城県

常閉防火扉:従来どおり特定建築物定期調査にて検査

建築設備 :従来どおり特定建築物定期調査にて検査

参考:
建築基準法に基づく定期報告制度|宮城県
定期報告制度の改正について(令和7年7月1日施行)|宮城県

◇東京都

常閉防火扉:従来どおり特定建築物定期調査にて検査

建築設備 :告示改正どおり

参考:
2.定期調査・検査制度改正の内容|東京都 都市整備局

◇神奈川県

常閉防火扉:横浜市を除く地域では告示改正どおり
      川崎市では随時防火設備がない建物は特定建築物調査にて検査

建築設備 :特定行政庁を除く市町村は従来どおり特定建築物調査にて調査
                              その他地域では告示改正どおり

参考:
定期報告制度について – 神奈川県ウェブサイト

◇大阪府

常閉防火扉   :従来どおり特定建築物定期調査にて検査

建築設備    :告示改正どおり(設備対象外の用途や地域では従来どおり特定建築物調査にて検査)

小規模事務所ビル:階数が3以上、かつ、事務所等に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもののうち、
         地階および3階以上の階における事務所等に供する部分の床面積の合計が100㎡超の建築物を  
         検査対象として規模が拡大。
          (一部地域)※兵庫県の一部も対象拡大
                                        

参考:
定期報告制度について|大阪府
建築基準法第12条に基づく定期報告の調査・検査区分を変更!|大阪府
定期報告対象建築物の拡大について(令和7年4月1日施行)|大阪府

◇福岡県

常閉防火扉:従来どおり特定建築物定期調査にて検査

建築設備 :告示改正どおり(共同住宅は従来どおり特定建築物調査にて調査)

参考:
特定建築物等の定期報告制度について|福岡県
定期報告業務|福岡県建築住宅センター
定期報告制度の運用についてのお知らせ|福岡県建築住宅センター

■改正にあたって注意したいポイント

最後に、改正にあたって注意したいポイントを2つ解説します。

◇検査範囲・内容は特定行政庁のウェブサイトなどでチェックする

先述のとおり、12条点検は特定行政庁が検査項目を定めます。所有・管理する建築物等が検査対象になるのか、どのような検査を行なわなければならないのか、特定行政庁のウェブサイトなどで確認しておきましょう。

◇調査・検査依頼は専門の検査機関へ

12条点検は複雑で量も多く、専門的な知識・技術が不可欠です。調査・検査は実績が豊富な専門の検査機関へ依頼しましょう。

なお、定期報告を怠る、または虚偽の報告をした場合、建築基準法第101条に基づいて100万円以下の罰金に処されます。法改正に対応しながら確実に調査・検査を行なえるよう、信頼のおける検査機関を選びましょう。

調査・検査に関するご質問など、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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